日本エネルギーパス協会

家の燃費を見える化してますか?

計算ロジックについて

エネルギーパスでは、住宅のエネルギー消費量を複数の規格に基づいて計算しています。冷房・暖房の熱負荷に関しては建物の暖冷房エネルギー計算の国際規格である「ISO13790」、漏気計算には「ISO13789」を採用しています。なぜ国際規格をわざわざ使うのかというと、現在の日本の熱負荷計算では正しく「家の燃費」を表すことが難しいからです。

詳細は割愛しますが、日本の熱損失計算との大きな違いは、以下の4大項目についてです。

「気密性による漏気量の考慮」

日本では熱負荷計算時に漏気量を考慮していません。平成25年改正省エネ法でも、新省エネ基準(平成4年)以上の住宅では漏気量はゼロとして評価しています。ところが、現実には気密不足による漏気量は大きく、自立循環型住宅ガイドラインにも気密性能差による漏気量の調査報告があげられています。冷房熱負荷も同様であり、漏気量が増加すると熱気の流入量が増加及び高湿度な外気流入による潜熱負荷の増加によって冷房負荷も増加してしまいます。
省エネ法の最大の問題点は、気密性を考慮しない点にあるのかもしれません。

「周辺の建物の影の考慮」

日本では、日射熱取得量を計算する時に開口部の設置高さを問いません。つまり開口部はどの高さにあっても日射熱がバッチリ取得できるという評価です。改正省エネ法は邸別評価ではないので、これでも問題はありませんが、こういう発想で実際の設計はしません。実際の住宅を設計する場合は、周辺の建物の状況を踏まえるからです。周辺に一切日射を遮るものがないことは稀で、ことに住宅が居であれば周りには別の家が建っています。位置関係によっては1Fの窓には日が差さないが、2Fの窓であればバッチリ入るという事はよくあるケースではないでしょうか。エネルギーパスは邸別計算のため、開口部上の庇だけではなく、周辺の建物の影や袖壁などの影の影響も考慮して、日射熱を計算しています。実際の住宅設計においては周辺建物の影は、とても大きな変動要素となっており、欠かすことが出来ません。

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「熱容量を考慮した取得熱利用率」

日本では、太陽から取得できる熱量をそのまま利用できる計算をしている場合が多いようです。熱容量の評価方法が未整備のため、考慮しないとしている様です。確かに次世代省エネルギー基準程度のあまり断熱性能の高くない住宅では利用効率は90%以上となるため、あまり気にすることがなかったのですが、これからはより高性能な住宅が多く登場していくる時代になりましたので、熱容量を考慮した空調熱負荷計算が必要とされる様になってきています。

「全館冷房時における通風の考慮」

日本では、全館冷房時に通風の評価をしないようになっていますが、現実的には5月から冷房を使用する住宅はほとんど存在しません。なぜなら、外気温度が低いので、窓を開けて通風を行うことで涼をとるのが普通だからです。エネルギーパスでは中間期は通風することで冷房負荷を削減する計算方法をとっています。

●ISO13790について(空調熱負荷計算の国際規格)

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暖房負荷はUa値に換気による熱損失を加えた総合熱損失から、日射「熱取得量+内部発生熱」に利用効率をかけた熱取得を差し引きます。ISO13790の特徴として利用効率ηがあります。利用効率ηとは熱取得量と熱損失、熱容量の変数を関数化したものです。ざっくりと説明すると、熱容量が大きいとは、熱の貯蔵出来るキャパが大きいという事であり、日射熱や内部発生熱などの取得熱が壁面などに蓄えることが出来るため、日が沈んだ後も暖房エネルギーとして高効率で活用できます。一方、熱容量が小さいと取得熱によって室温がすくに室温が上昇してしまい、日が沈むとすぐに壁などに貯めた熱が切れてしまうため、暖房エネルギーの増大につながります。

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なお、間欠空調の場合は熱容量が大きいと、冷えた壁を温める必要があるため、暖房の立ち上がりが遅くなり、暖房負荷の増大につながる場合があります。

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冷房熱負荷は暖房の反対であり、熱取得量から熱損失を差し引く計算となります。つまり、冷房熱負荷を削減するためには、出来るだけ日射取得量を削減し、熱損失を増加させる必要があります。
これが高断熱住宅が夏暑くなる主な原因であり、断熱しすぎると夏暑くて困るという観念的な思考パターンを助長しておりました。
しかし、外気温が設定室温を上回った場合には、右辺の計算式はマイナスからマイナスを引く計算となり、プラスになります。つまり、外気温が27℃を超えるような夏日においては断熱性能が高い方が冷房負荷が小さくなります。断熱は夏の冷房負荷も削減できることが分かります。また、外気温が設定室温よりも低い場合、いわゆる初夏晩夏などの中間期はどうするのかというと、熱損失は外皮Ua値と換気熱損失の合計なわけですので、通風を行えば熱損失を大きく増加させることが出来ます。
結論としては、冷房熱負荷を最小限化するためには、断熱性能を高め、日射コントロールで日射取得量を削減し、中間期には通風量を増加させれば良いことが分かります。

上記の熱負荷計算を、期間中のデグリーデ換算することで暖房熱負荷、冷房熱負荷を計算しています。

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その他、外皮計算方法や冷暖房設備効率、給湯負荷・設備効率、換気、照明、家電、調理器具などの評価は「平成25年改正省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説」を採用しています。

客観的かつ確かな根拠に基づいた建物のエネルギー消費量の評価方法となっておりますので、安心してご利用いただけます。

h25kaisei最終消費エネルギーを評価するためには、断熱気密などの外皮性能だけではなく、設備効率を設定する必要があります。

特にエアコンや給湯器などの熱を発生させる設備機器は、外部内部の温度・湿度、使用時の設備負荷率、吹出風速などの様々な環境要素に応じて効率が変化するため、カタログに表示されている定格効率と実際の使用時のエネルギー効率が大きく異なります。
エアコン暖房の消費電力・処理能力

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例えば、ルームエアコンのエネルギー効率を表すCOPの測定条件は、暖房は外気温7℃時に室内の温度を20℃にする場合の負荷率100%かつ最大風量での評価となります。
また、冷房は外気温35℃かつ湿度40%時に室内を温度27℃湿度36.5%にする場合の、負荷率100%かつ最大風量での評価となります。
つまり、暖房は実際の使用時よりも測定条件が良いために効率が大きく低下する場合が多く、冷房は実際の使用時よりも測定条件が過酷なため、効率が良くなる場合が多くなります。

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そこで、燃費計算時には、カタログ表記された定格効率に、実使用効率に変化させるための「エネルギー効率補正係数」を評価して計算しなければなりません。

特にエアコンやセントラル空調機、エコキュートなどのヒートポンプを採用している熱源においては「エネルギー効率補正係数」をいくつに設定するかによって極端に変動してしまうため、より正確な計算が欠かせません。
例えば、10,000kWhの暖房負荷を実使用補正後のCOPを2で計算するのと、3で計算するのでは、33%の差があり、消費電力は1,667kWh(31円/kWhの場合)の差となり光熱費は5万円以上ずれてしまいます。
ところが、エネルギーパス以外の燃費計算ツールでは、「エネルギー効率補正係数」をユーザーの経験則から任意入力としていたり、改正省エネ法のWeb計算プログラムの計算結果を一覧化して関数化したものばかり。公開されているにもかかわらず、改正省エネ法の計算式を正式に採用しているものは見当たりません。
せっかく外皮熱損失などを詳細に入力して計算しているにもかかわらず、最も変動率の大きなエネルギー効率補正係数をアバウトに入力してしまうと、せっかく積み上げてきた努力が全て水の泡になってしまいます。

同じ理由で、太陽光発電の自家消費割合やエネファームの発電量などもWebプログラムの出力結果の逆解析による関数化では正しい予測結果になりません。

エネルギーパスでは、平成25年改正省エネ法の計算式を採用しているため、より正確かつ公平で客観性の高い燃費計算が可能です。

 


※1 10kW時の電気エネルギーは概算でおよそ1Lの灯油エネルギーと同等。30kW時/m2の燃費の建物は3L/m2とおよそ同等。このレベルの燃費性能の家のことを、3リッターハウス、あるいは30kW時ハウスなどと呼びます。

※2 国交省と経済産業省では、告示で、建物の燃費計算の際は、一年間を通じて室内温度を18度~27度に保つことを想定しています。
※3 COP3=最近のエアコンでは1の電気で3の空調エネルギーを造り出すことが出来ます。4,000kW時÷3→1,250kW時のエアコン用電気が必要とみなし、電気代30円で計算。

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