2015年7月1日
【投資としても魅力的な高断熱化】
今年4月から、新築戸建て住宅も「長野県建築物環境エネルギー性能検討制度」の義務対象になった。この機会に、県がこの制度を通して目指していることや、本来、消費者が住まい選びの際に知っておくべき、住まいの『燃費性能』と『健康性能』との関わりなどについて、シリーズでお届けする。
さて、これまで住まいの断熱・気密性能の大切さを説明してきた。読者の中には、それはわかるが、そうは言っても高断熱住宅は価格が高く、「とても手が出ない」と感じている方も多いのではないだろうか。
実はそれも誤解なのだ。確かに「高断熱・高気密住宅」は、「低断熱・低気密住宅」よりも、住宅自体の価格は高くなる。しかしその分以上に、ランニングコスト(光熱費)が安くなり、結局は「高断熱・高気密住宅」の方がはるかに得になる。
表は、一般社団法人日本エネルギーパス協会の試算だ。同協会理事の晝場貴之氏によると、現在の省エネ基準相当の住宅(Aランク)に対して、断熱性能の劣る平成4年基準相当(Bランク)の住宅は、40万円程度建設費が下がる。逆に省エネ基準よりも10%程度性能を上げた住宅(Sランク)の場合は、50万円、さらに性能を上げた北海道仕様(S+ランク)の場合は、130万円程度建設費が上がるという。
それに対して、光熱費は、35年間でBランクが210万円余計にかかり、逆にSランクだと160万円、S+ランクは200万円安くなる。高断熱住宅の方が得なのは一目瞭然だ。光熱費は今後まだまだ値上がりする可能性もあり、この試算よりも高断熱住宅の方がさらに得になる可能性も高い。
住宅ローンを35年間で組む方も多いだろうが、断熱仕様アップによる年間の住宅ローン増額分と光熱費低減分とを比較すると、年間支払額でどの仕様が一番得なのかがすぐにわかる。低金利時代は、特にランニングコストをより重視した方が有利になる。
なおこの試算では35年間でSランクが最も得になる。しかし晝場氏は、住宅ローン完済後は光熱費削減分をすべて享受できることや健康面のメリットを勘案し、できればS+ランクをお奨めしたいという。
ともかく大切なのは、初期コストとランニングコストのバランスを比較してベストの仕様を決めることだ。問題なのは、ランニングコストを判断材料にして家を計画する人がほとんどいない今の日本の現状だ。ちなみにEUでは、全加盟国が家の「燃費性能」の算出や提示を義務付けている。長野県の「建築物環境エネルギー性能検討制度」は、これを参考にした制度だ。つまり、家の「燃費性能」を把握することで、適切な仕様を選定することを促すものだ。家を計画する際には、ぜひ「燃費性能」を把握し、初期コストとランニングコストのバランスから仕様を決めたいものだ。
次回は、住宅の「燃費性能」についてもう少し踏み込んでみたい。