日本エネルギーパス協会

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エアコンの最適容量(COP)分析 — エネルギーパスの新機能 その2

エネルギーパスに新機能が追加されました。

その名も「エアコンの効率分析」

いよいよ新機能について、解説させていただきます。

エアコンを暖冷房機器として使用している実務者は必見の内容です!

 

前回のおさらい

  1. APF(COP)は定格出力容量が大きいほど効率が悪い?
  2. 実際のCOPは外気温と負荷率で決まる。
  3. エアコンの容量選定は、断熱、気密と間取りを考慮しながら、最適な容量選定を設計者が行う必要がある!

という話でした。

エアコンの最適容量(COP)分析 — エネルギーパスの新機能 その1

 

とはいえ、刻一刻と変動する外気温と暖房負荷率を計算するなんて、専門の研究機関でないとできないのでは?と思いますよね。

だからみなさんやむなくザックリ0.7掛けとかで納得するしか道はありませんでした。

 

ザックリ補正では納得できなかったので、詳細検証ツール作りました。

Q値計算をしっかりと行い、詳細なまでに面積計算をせっかく行っているのだから、エアコンの効率計算もしっかりと計算したい!

ということで、エネルギーパスの計算過程で補正COPが取得できるので、グラフ化をできるようにバージョンアップしてみました。

(エネルギーパスのエアコン設備効率の計算はH25年改正省エネ法第三節ルームエアコンディショナーの計算式を使用しています。)

 

エアコン効率分析ツール

1枚目上段のグラフの読み方は、縦軸が負荷率で、横軸が時間、1枚目下のグラフの読み方は、縦軸がCOPで、横軸が時間です。

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では、まずは負荷分布図から。

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日中陽が出てきて外気温も上昇し、暖房負荷が極端に少なくなった時(いわゆる低負荷運転時)にCOPが大きく低下しているため、連続暖房の場合はエアコンの容量がやや大きすぎる可能性が見て取れます。

つまり、本住宅では暖房負荷が小さすぎるために、超低負荷運転時間が多い計算結果となっており、より低い定格容量とするか又は、低負荷運転に強いエアコンの選定が求められます。

前回お伝えした通り、一般的なエアコンは負荷率0.6~0.8当たりでは高い効率で運転できるが、負荷率が0.5を切ってくると途端に効率が落ちるため、安全率を見すぎると効率を落としてしまう。

もし本住宅で普通のエアコンを採用していたとすると、最低運転効率である0.3=700Wあたりの断続運転となり、日中のCOPは1.0を切る可能性すらあるほど超低負荷運転が連続しています。(下記は一般的なエアコンのCOP補正率グラフ)

 

ScreenClip

 

次に下段の効率補正COPのグラフをご覧ください。

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今回選定したのは超低負荷運転に強いエアコンなので、温かい日中のCOPこそ瞬間的に2前後までCOPは落ちておりますが、大半の時間はCOPの8掛けあたりを推移しています。

つまり、高いCOPを維持しながら年間を通して運用可能であることを示しています。

 

続いて2枚目。

ScreenClip

表形式で計算条件と計算APFが表示されています。(本建物ではAPF=4.67と計算されました。)

また、4段目には、設定暖房温度時に湿度40%をキープする為に加湿に必要な絶対湿度g/hを参考までに示しております。
(本件は全熱交換器が導入されており、自然発生湿度で40%以上を十分にキープできる為、0g/hとなっており加湿器は導入しませんでした。)

ただし、窓や壁の内部などで結露を起こしていない前提での計算となりますので、結露が発生したり、開口部の開け閉めを行ったりする場合はさらに加湿する必要があります。
(だから加湿してるそばから除湿してしまう様な、結露する窓や壁をほんとは使っちゃダメなわけです。)

 

最後に主たる居室のエアコン全館連続暖房の全期間におけるCOP分布図です。横軸が負荷率、縦軸がCOPとなります。

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先ほど1枚目でもありました通り、評価対象のエアコンは最大効率は負荷率0.3あたりの時に発生する低負荷運転に強いタイプを選定しているため、ほとんどの時間でCOP=4以上が叩き出されており、全期間通して高いCOPで運転できることが確認できました。

そのため、本住宅ではエアコン容量が暖房2.5~2.8kW(6~8畳用)が適容量と結論付けました。

結果として、本住宅には一番小さな暖房2.5kWの6畳用エアコンを採用しました。

 

 

実測と比較してツールの精度を検証してみた。

さて、上記のように分析結果が出ましたが、実際どうだったのか?気になりますよね。

そこで今回「エアコンの効率分析」のリリースにあたって、実建築で実測実験を行ってみました。

 

実測条件

  • 日時 3月7日~3月25日までの18日間
  • 場所 千葉県浦安市
  • 建物スペック Q=0.86  Ua=0.27 C=0.3  延床約27坪(上記分析サンプルと同建物)
  • エアコン 2.2kWのエアコン1基で全館暖房 全室平均室温=約22℃

 

 負荷率ごとの実測COPと計算COP

エアコンの実測結果が緑色、そして同期間の外気温と湿度と熱負荷で計算してみた計算値が青色です。

プロット図の見方は、縦軸はCOP、横軸はエアコンの負荷率です。

ScreenClip

実測のほうが若干効率が良い感じではありますが、なかなかの精度で一致しておりました。
(今年は暖冬だったので外気温高めで低負荷時のCOPが伸びてます。)

一部0.8~1.0あたりで低い効率が計算だけ現れていますが、これは外気温が5℃を下回りかつ湿度が80%を超えていたのでデフロスト計算をしています。
現実にはデフロストが発生しなかったので、計算値だけデフロスト係数0.77を掛けられてしまっています。
(外気温が3~4℃だったのでもう少し外気温が低くないとデフロストは起こさないんでしょうね。)

 

外気温ごとの実測COPと計算COP

つづきまして、縦軸COP、横軸外気温のプロット図です。
プロット図の見方は同じく実測が緑で計算が青、縦軸はCOP、横軸はエアコンの負荷率です。

ScreenClip

実測COPは外気温が高くなるほどにばらつきが拡大する傾向にありましたが、(超低負荷運転時には効率がガクッとさがる)おおむね計算値と近い結果になりました。
(本実測は簡易測定につき、噴出し風量が小さくなるほどに測定誤差が生じやすいという傾向がある。)

18日間のエアコンから出力された熱量が322.55kWh、そして消費電力が67.04kWh 322.55÷67.04=4.81 APF=4.81(計算値=4.67)

 

結論

エアコンの効率分析ツールはなかなかの精度で計算することができるため、詳細検討ツールとしては十分実用性があると考えられます。

ザックリ0.7とか補正するよりもはるかに有意義な検証ができますので、断熱気密を頑張っている実務者の方には、エアコン容量選定ツールとしてぜひ使っていただきたいと思います。
(なお、エアコン冷房の分析も出来るようになっています。冷房に関する実測検証は夏に行う予定ですので、お楽しみに。)

エネルギーエージェントの皆様は今すぐご利用いただけるようになっておりますので、ぜひご活用ください。

 

なお、このツールはお試し期間として、当面はエネルギーパス利用者全員にご利用いただけますが、数か月後をめどに会員登録エージェントのみ利用可能なサービスとなります。
まだ会員登録手続きがお済みでないエージェントの皆様におかれましては、ぜひ会員登録をご検討ください。(詳細は事務局の加藤まで)

これ以外にも今後は登録会員向けに、様々な設計サポートツールの開発し、ご提供する予定となっておりますので、ぜひご活用ください。

 

 

それから、まだエネルギーパス講習会を受講しておらず、エネルギーパスをお持ちでない方は、ぜひ講習会への参加をご検討ください!!

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