「必要エネルギーの詳細」(2枚目)
●必要エネルギーの詳細
必要エネルギーの詳細表示です。円グラフ3は、評価対象住宅における冷房や暖房などの各必要エネルギーの割合を示しています。一般的に日本は温暖地域という誤解が強いため、エネルギー需要を計算すると過半数以上は暖房エネルギーとなります。住宅の省エネルギー性能を高めていくためには、暖房や冷房などの空調エネルギーの削減が欠かせません。
●用途別必要エネルギー割合
円グラフ4は外壁や開口部などの部位別の熱損失の割合を示しています。暖房エネルギーや外気温が室温を超える真夏の冷房エネルギーを削減するためには、熱損失を抑えることが効果的であり、熱損失の大きい部位から断熱性能を上げるなどの対策を考慮していくことが効果的です。
●部位別必要エネルギー割合
まずは設計段階で熱損失を数値化、グラフ化して可視化することで、正しい優先順位で検討することが可能となり、費用対効果の高い高性能化を実現することが出来ます。
余談ですが、断熱性能というと、一般的なお施主様は大概が壁の断熱材に注目します。ところが熱損失を計算すると壁は2~3番目、どの地域でも最も熱の損失が多いのは開口部(サッシや玄関ドアなど)であり、壁の断熱性能を優先させて強化するため、費用対効果に合わない省エネ住宅が多く見受けられます。
一般的には、外壁に100㎜未満の断熱材である場合は外壁が最も熱損失が大きいのですが、100㎜を超えると費用対効果が下がるため、開口部が最も熱損失が高く、次いで換気(気密含む)の熱損失が大きくなる傾向にあります。
●月毎の日射熱取得量
棒グラフ6は、月ごとの開口部や屋根などから室内に侵入してくる太陽熱の総量。開口部の方位や高さなどを工夫して出来るだけ取り込むように設計することで、冬期は補助暖房として暖房エネルギーを削減することが出来ます。一方、夏期においては冷房エネルギーの増大につながるため、開口部の方位や高さ、縦庇、横庇、ブラインドなどを駆使して出来る限り侵入を阻止する必要があります。
パッシブ設計がきちんとできている住宅では、冬には多くの日射熱を取得し、夏には日射熱を最小限化するため、グラフ6はきれいなV字を描きます。ところが、最近の住宅においては省エネと歌いながらも、グラフ6がへの字を描いている設計をよく目にします。冬に日射取得を最小限化し、夏に日射熱を最大限取り込む省エネ住宅(太陽光発電を付けただけ)、居住者がかわいそうでなりません。機械類に頼っただけでは省エネで快適な住宅は実現しません。
●月毎の空調負荷
最後に、棒グラフ5は月毎の暖房、冷房の必要エネルギー量、つまり空調負荷です。このように室温を20℃~27℃にキープするためにはかなりの熱負荷がかかることが分かります。
暖房エネルギーは断熱気密、日射熱の取得によってドンドン減らすことが出来ます。冷房エネルギーも断熱気密、そして窓からの通風によってドンドン削減することが出来ます。ただし、通風による冷房負荷の削減は外気温が27℃よりもある程度低い時期でないと効果がありません。地域にもよりますが、7月や9月などの初夏晩夏に大きな効果を発揮するため、冷房エネルギーの削減において重要な要素となります。
●空調設定条件、外皮断熱・日射コントロール性能
表4では冷房や暖房などの設定温度や夏期通風利用などの空調設定条件を記載しています。条件温度を変更しない限り、冬期は20℃、夏期は27℃で計算します。
表5では、評価対象住宅での計算の外皮条件となる断熱性能(Q値)や気密性能(C値)、平成25年改正省エネ法で新たな基準となった外皮断熱性能(Ua値)や夏期日射取得率(mC値)、冬期日射取得率(mH値)を表示しています。
※Q値は旧基準、Ua値やmC値、mH値は平成25年改正省エネ法に基づいて計算されています。
●冬期自然室温グラフ
横棒グラフ7では、評価対象住宅における冬期(12月~3月)の平均室温を表しています。
緑の矢印は暖房設備を使用しなかった場合に日射熱と内部発生熱のみで家全体が何℃ぐらいになるかを示しています。
玄関や脱衣室などの暖房設備のついていない部屋や、帰宅時の室温の温度の参考となる値です。
紫の矢印は間欠暖房で過ごした場合の平均的な室温を表しています。全体の平均温度として評価しているため、暖房を使用している時の廊下などの室温の参考値となる値です。
無暖房温度、間欠暖房温度共に外皮断熱性能が低いほどに、日射取得量が多いほどに温度が上昇します。暖房設定温度との温度差が大きいほどに室内温度差が高いことを表しており、居住快適性及び健康性能が低いことになります。