2015年7月8日
【把握したい住まいの燃費性能】
今年4月から、新築戸建て住宅も「長野県建築物環境エネルギー性能検討制度」の義務対象になった。この制度を活用して、住宅計画の際に初期コストとランニングコスト(燃費性能)を比較して断熱性能等の仕様を決めることの大切さを前回説明した。
また、EU加盟国では、家の「燃費性能」の算出・提示を義務付けられていることも紹介した。
図1はドイツの不動産広告の例だ。一般社団法人日本エネルギーパス協会理事の晝場貴之氏によると、この広告からわかるとおり、EUでは一般消費者も家の燃費性能をとても重視するようになっているのだという。
我が国の住まい選びでは、価格や駅からの距離等の情報が重視される傾向が強いが、県内の一般消費者へのアンケート調査結果(図2)からわかるとおり、我が国でも初期費用(工事費等)に次いで、光熱費額等のランニングコストの金額情報を求める傾向が高まっている。
「長野県建築物環境エネルギー性能検討制度」も、住宅価格と燃費性能とのバランスを見ながらの家づくりを一般消費者に促す制度だ。そこで制度活用時に大切になるのが評価ツールの選定だ。“エネルギーパス”や“CASBEE”、“住宅・住戸の省エネルギー性能の判定プログラム”等、県はこの制度で活用できる評価ツールを複数指定している。ツールごとに特色があり、どのツールがベストなのかは一概には言えない。
ただ、住宅価格と燃費性能とのバランスを見ながら家づくりを進めるならば、年間の冷暖房に係る金額が算出できる評価ツールを選択することが望ましい。評価ツールによっては、環境エネルギー性能の評価結果は、エネルギー消費量のみで提示され、金額の提示はない。そのため、例えば住宅事業者から、「A仕様の場合の住宅価格は1,800万円、S仕様だと1,850万円です。一方、それぞれの環境エネルギー性能は、780MJ/(㎡・年)と690MJ/(㎡・年)です。」と説明されることになる。ほとんどの方にとっては、そのような説明では、結局どの仕様の費用対効果が最も優れているのかの判断は難しいだろう。
つまり、住宅価格と燃費性能とのバランスで判断するためには、環境エネルギー性能も金額、すなわち年間の冷暖房費用が提示される評価ツールが望ましい。
そこで次回は、年間の冷暖房に係る費用が算出できる評価ツールであるエネルギーパスについて説明したい。